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脈絡ないブログ

着席の権利

 

パン屋のイートイン。

2人席×3

4人席×2

このような座席数。

 

4人席のうちの1つは

すでに初老3人組(おばおばおじ)が着席している。

癖の強いおばが話していて

2人は積極的に相づちを打ちながら

身内話に夢中。

常連感がすごい。

机の上の食料はすでに空っぽである。

パンのトレイも3枚重ねて置き、

その上に飲み干した

コーヒーの紙コップ(ゴミ入り)も置かれている。

パット見、帰宅直前の装いである。

しかしながら帰る気配は全くなく、

常連感で着席の権利を主張。

 

その他の席はすべて空いていた。

店内はカランとしていた。

パン種類も少な目であった。

癖のないBGMと、

癖のあるおば達の話し声、

やる気があるのかないのか判別つかない

若い女の店員がカウンターでトレイを拭いている。

 

私は4人席に座り、

隣の椅子に荷物を置いた。

荷物は地面の荷物置きに入れるよりも

すぐ隣にある方がいいに決まっている。

まず惣菜パンを2つ食べた。

カレーパンはサクサク感が良し、

ベーコンエッグパンは王道感で良し。

 

中年女性の1人客が来た。

2人席に着席。

食べる前に写真を撮り、

すぐ食べ終わると

参考書2冊・ノート1冊・

マルバツで答え合わせ済の解答用紙1枚

を小さい机いっぱいに広げ

勉強を始めた。

高さ2cmのコーヒーで

着席の権利を主張。

 

その後来た家族は

2人席を繋げ4人席にし、着席。

普通に「今来たばかりの客」として

着席の権利を主張。

 

これで店内満席である。

 

こちら残るパンは甘い系2つ。

ペロッと食べてしまえるのだが

やはり食べきるのは躊躇される。

食べきってしまったあと、私は

何をもって着席の権利を主張するというのか。

コーヒーだけ残っていれば勉強女と同じでは?

いや、こちらは

1人で4人席を占拠しているという

負い目がある。

次のイートイン希望客の厳しい視線を

こちらに向けないようにしたい。

なぜなら、他に行き場がないからである。

時間の許す限り

好きなだけ座ってゆっくりしていたいのだ。

 

しかしながら

私が残るパンをゆっくりかじる間に

新たな客は静かに店外席にいき、

初老3人組は帰り、

その跡地に着席した初老おじ1人も帰り、

家族も店外席の客も帰り…

 

店内の勉強女と私だけとなった。

 

勉強女はコーヒー残量を減らすまいと

無料の水を何度も注ぎに行っている。

その足取りは優雅だが

やっていることが乞食に近いので

ただただ滑稽である。

 

もういい。

 

店内が寂しくなり、私は自分の中から

着席への執着が消えていくのを感じた。

座れて当たり前のところに座っていることに

ありがたみはあっても面白みはないのだ。

 

もういい、ここを去ろう。

 

もしここで勉強女が荷物をまとめだしたなら

私はこれ以上ない

居心地の悪さを感じることだろう。

 

そのとき、勉強女がコーヒーを飲み干した。

やばい。

 

私はこれから残るすべての水を飲み干し、

華麗にパン屋を後にすることにする。 

 

さようなら、勉強女。

さようなら、着席の権利。